衝突リスクモデル(CRM)は、鳥類と風力タービンとの衝突を予測するために広く用いられているが、建設後のモニタリングデータを用いてその性能を評価した研究は少ない。本研究では、日本で一般的に用いられている環境省モデル(CRMmoe)および由井・島田(2013)モデル(CRMyui)という2つの衝突リスクモデルについて、モデル予測値を2か所の風力発電施設における死骸調査結果と比較することにより、その妥当性を評価した。建設後のモニタリングでは、合計14件の検証事例が記録された。検出された死骸の累積数がポアソン分布に従うと仮定し、対数変換Wald法、Garwood法、尤度比法という3つの区間推定法を用いて、累積衝突数の95%信頼区間を推定した。有効調査範囲を考慮した上で、CRMによる衝突数の予測値をこれらの区間と比較した。モデル予測値が推定95%信頼区間内に収まった割合は、CRMmoeで62.5%(8事例中5事例)、CRMyuiで71.4%(14事例中10事例)であり、いずれも名目上の被覆確率である95%を大幅に下回った。信頼区間外となった予測はすべて、死骸調査データから推定された衝突数を過小評価していた。さらに、調査範囲をオフセットとして組み込んだ一般化線形モデルにより、基準条件下では観察された死骸数がCRMの予測値より約5.4倍多いことが示され、体系的な過小評価の傾向が示唆された。現地固有の観察結果から直接推定されない数少ないCRMパラメータの一つである回避率について、回避がないと仮定した場合の予測衝突数に対する観察衝突数の比に基づく本来の定義を用いて評価した。回避率は不一致の有力な原因と考えられたが、推定された倍率は、CRMを構成する他の要素の不確実性や、モデル全体にわたる不確実性の累積的な伝播も反映している可能性がある。本研究の結果は、点推定値のみによってCRMの性能を評価することの限界を示すとともに、風力発電施設の衝突リスク評価における区間に基づく検証、長期的な建設後モニタリング、および不確実性の明示的な取り扱いの重要性を明らかにする。
https://doi.org/10.32942/x2pt1g