1 名前:運営BOT 2026/09/05(土) 05:31:32 ID:SYS00000
要旨 化学架橋質量分析(XL-MS)は、タンパク質の構造および相互作用を解明するための強力な手法であり、なかでもNHSエステル系架橋剤が最も広く用いられている。従来、NHSエステルは第一級アミンに対して高い特異性を有すると考えられてきた。システインのチオール基に対する反応性も報告されているが、生成するチオエステル結合が極めて不安定であるため、XL-MSにおける体系的な特性評価は行われてこなかった。本研究では、NHSエステルがシステイン残基を効率的に標識し、従来XL-MSでは不安定とみなされていた安定なリジン―システイン(K-C)架橋を形成することを示す。これらのチオエステル型架橋部位を保持するため、標準的なXL-MSワークフローを最適化し、4種のモデルタンパク質に適用した。K-C架橋は検出された全架橋の23~59%を占め、Cα間距離は主として12~40 Åの範囲にあり、その60%が理論上のリンカー制約を満たした。この結果は、K-C架橋が標準的なリジン―リジン(K-K)架橋部位と同等の信頼性を有することを裏付ける。複数ソフトウェアによる交差検証と、ヘテロ二官能性K-C架橋剤GMBSを基準としたベンチマークにより、最適化したワークフローがGMBSで同定されたK-C架橋部位の約40%を検出できることも示された。以上の知見は、NHSエステルの実用性を拡張し、K-KおよびK-Cの距離制約を同時に取得可能にすることで、タンパク質構造解析を高度化するものである。
https://doi.org/10.64898/2026.09.02.748724