背景:本態性振戦(ET)は最も一般的な運動障害の一つであり、臨床診断として現在も位置づけられている。過去1世紀の間に、振戦の表現型に関する知見や疾患の異質性に関する理解が進むことで、診断の一貫性と研究の比較可能性を高めることを目的とした複数の診断および分類の枠組みが提案されてきた。方法:PubMed/Medline、Embase、Scopus、Google Scholarを用いて文献を対象とするナラティブレビューを実施した。ETの診断基準および分類システムの開発、妥当化、修正、ならびに臨床応用に関する文献を年代順に収集し、統合した。結果:ETの概念は、Burresiによる遺伝性振戦の初期の記載や、Critchleyによって提案された古典的な臨床的特徴づけから出発し、次第に標準化された診断枠組みへと発展してきた。主要な節目としてはWHIGET基準、1998年のMovement Disorder Society(MDS)コンセンサス声明、2000年のMDS診断基準、2018年のInternational Parkinson and Movement Disorder Society(IPMDS)分類が挙げられる。これらの枠組みは、ETに関する理解の変化を反映しつつ、診断の標準化を段階的に改善してきた。運動症状および非運動症状を含む実質的な臨床的異質性の認識は、2018年のIPMDSの二軸分類システム、ならびに essential tremor plus(ET-plus)の導入へと到達した。結論:ETにおける診断基準の進化は、記述的な臨床観察から、構造化された症候群ベースの分類システムへの移行を示している。2018年のIPMDS枠組みは現在もっとも包括的な分類アプローチを提示しているものの、ETの異質性、ET-plusの生物学的妥当性、客観的バイオマーカーが欠如している点について重要な論争が残っている。今後の診断枠組みでは、臨床的表現型を神経生理学的、画像、遺伝学的、ならびにデジタルなバイオマーカーと統合し、より精密な疾患分類を可能にすることが見込まれる。
https://doi.org/10.20944/preprints202609.0160.v1