気候変動は農業における水不足を悪化させるため,干ばつ耐性をもつ作物品種の開発が必要となる。本研究では,栄養生長期における水欠乏への応答が対照的であるとして以前に選抜されたMAGIC(Multi-parent Advanced Generation Intercross)集団由来の12系統のナスを評価した。成体の生産条件下での耐性を検証するため,温室での170日間の栽培期間にわたって,5回の灌水停止サイクルを行った。収量構成要素,ストレス耐性指数(STI),ならびに生理パラメータ(水分状態および気孔コンダクタンス)を評価した。加えて,光合成色素,酸化ストレス指標,抗酸化化合物,オスモリライトを定量し,最終的な乾物生産とともに,耐性の生化学的基盤を特徴づけた。その結果,栄養生長期で耐性と分類されていた5系統のうち4系統は,生殖期でも最も耐性の高い系統群にとどまることが示された。具体的には,水制限条件下で最も生産性が高かったのはL13,L78,L179であった。L13とL179は発生段階の全期間を通じて耐性が安定していたのに対し,L78は段階特異的な耐性を示し,生殖生長期にのみ認められた。これらの知見は,遺伝的な干ばつ耐性の全スペクトラムを捉えるために,初期段階のスクリーニングと成体段階での検証を統合することの重要性を強調する。最も生産性の高い系統は,地上部バイオマスが中程度であること,高い葉の含水状態,および気孔コンダクタンスの維持によって特徴づけられた。しかし用いられた戦略は異なっていた。すなわち,L179は光合成色素含量が高かった一方で,L13は総糖の蓄積が高いことによって特徴づけられた。全体として,本結果は複数形質にもとづく指針を提示し,気候に強いナスの品種育成のためのエリートなMAGIC親系統を特定するものである。
https://doi.org/10.64898/2026.09.01.748492