慢性痛は広範な公衆衛生上の課題であり、個人や地域社会に対して健康面、情動面、経済面で大きな負担を課す。痛みは主観的であり客観的バイオマーカーを欠くため、通常は患者報告スコアとして数値尺度(しばしば0から10)で測定される。近年の痛み研究では、日ごとに複数回の評価を行い、研究期間の複数のフェーズにまたがる生態学的瞬間時点評価が用いられる(例:ベースラインと介入後の評価の一連)。これらのデータでは、極端な値(すなわち最小または最大の痛みスコア)に多くの評定が集中していることがしばしば観察される。これは統計学文献では通常、ゼロ・インフレーションおよびワン・インフレーションと呼ばれる。また、日内および日をまたぐ両方で、個人内のばらつきがかなり大きいことも多い。これらの現象は、線形混合モデルの正規性仮定など、一般に用いられる多くの統計手法の前提を破るため、統計解析に課題をもたらす。そこで本研究では、平均パラメータおよび分散パラメータに対して被験者間のランダム効果を導入し、ゼロまたはワンのインフレーションの可能性を持つ痛みスコアをモデリングするためのベイズ型ベータ二項混合効果モデルを提案する。シミュレーション研究により、現実的なサンプルサイズ、時点数、ゼロ・ワンのインフレーション水準において、本手法がモデルパラメータを正確に推定できることを示す。さらに、縦断的な痛み研究2件のデータへの適用により、本モデルは既存のモデルよりもデータへの適合が良好であり、正しく特定化される場合には、痛みの縦断的変化に関する不確実性区間を、特にゼロ・ワンのインフレーションを伴う結果について、より正確に与えることが示される。加えて、本モデルは臨床的に意味のある痛みイベントが生じる確率を直接推定する。提案手法は、患者報告にもとづく痛みの軌跡を研究するための強力な統計的枠組みを提供する。
https://doi.org/10.64898/2026.05.07.721507