要旨 Chandrayaan-2 Large Area Soft X-ray Spectrometer(CLASS)による予備的なX線蛍光(XRF)測定は、グリマルディ盆地(4°S, 66°W)にスカンジウム(Sc;微量の希土類元素)が存在することを示す説得力のある証拠を与える。この信号は、Automated Lunar and Meteor Observatory(ALaMO)により確認されたメテオロイド衝突地点に局在している。Scの検出に加えて、カリウム(K)およびリン(P)に関する顕著な特徴が得られ、深さ約2.22 mに埋没したKREEPに富む物質の掘削が確認される。月内の領域間での比較解析では、地球化学的な不均一性が明瞭に異なることが明らかになる。Mare SerenitatisおよびMare Fecunditatisにおける衝突は、主要元素(Na, Mg, Al, Si, S)に関しては一貫した特徴を示すが、Scを欠いている。これに対し、グリマルディ盆地ではMg, Si, K, Mnに加えて、固有のScの特徴が多様な元素組成を示しており、本地点を真の地球化学的異常として位置づける。典型的なプロセラルムKREEPテレーン(PKT)以外でグリマルディ盆地にのみSc信号が現れることは、KREEP様成分が、これまで認識されていたよりも広域に分布しており、衝突による掘削が起こるまでレゴリス下に隔離されていたことを示唆する。さらに、XRF放射強度と太陽フレア活動との間の強い相関を実証し、CLASS装置が、困難な条件下でも局在した元素異常を分解能よく捉える高い感度を持つことを裏づける。これらの結果は、月の分化に関する理解を大きく更新し、地下の地球化学的レザボアの直接的証拠によって、月のマグマ・オーシャン仮説の妥当性を強く補強する。
https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-10876979/v1