【導入】末梢神経障害における疾患活動性や治療反応のモニタリング用バイオマーカーは限られている。ビッグタウはタウの高分子量アイソフォームであり、主として末梢神経系(PNS)に発現する。末梢神経障害、多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病(AD)、健常対照(HC)において、ビッグタウ、脳由来タウ(BD-tau)、およびニューロフィラメント軽鎖(NfL)の血清レベルを調べた。
【方法】HD-X Single Molecule Array解析装置(Quanterix)で動作する超高感度の血液ベースアッセイを用いて、ギラン・バレー症候群(GBS, n=81)、ミラー・フィッシャー症候群(MFS, n=20)、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT, n=102)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP, n=43)、MS(n=159)、AD(n=20)、HC(n=41)の血清中のビッグタウおよびBD-tauを測定した。NfLはSR-X Single Molecule Array解析装置(Quanterix)を用いて神経障害患者で測定した。
【結果】血清ビッグタウは、GBSでADより高く(11.4 vs 2.4 pg/mL, p<0.0001)、MSでも同様に高かった(11.4 vs 9.0 pg/mL, p=0.01)。またCIDPおよびCMTと同程度であった。対照的に、GBSにおける血清BD-tauは、CIDPより高かった(3.0 vs 2.3 pg/mL, p=0.006)ほかMSでも高かった(3.0 vs 1.7 pg/mL, p<0.0001)が、CMTとは同程度であり、ADよりは低かった(3.0 vs 9.8 pg/mL, p<0.0001)。血清NfLは、GBSでCIDPより高く(32.5 vs 13.0 pg/mL, p=0.0002)、CMTでも高かった(32.5 vs 12.3 pg/mL, p<0.0001)、さらにHCより高かった(32.5 vs 7.6 pg/mL, p<0.0001)。
GBSと比べてMFS患者では、BD-tauが高く(12.7 vs 3.0 pg/mL, p=0.003)、ビッグタウは低かった(5.4 vs 11.4 pg/mL, p=0.002)。またNfLは高値を示したが(118.3 vs 32.5 pg/mL, p=0.16)、統計学的有意には達しなかった。NfL/ビッグタウ比は、MFSでGBS、CIDP、CMTより有意に高かった。GBSでは、BD-tauが初期の臨床重症度と相関した(1週時点のMRC、4週時点のI-RODS、4週時点の最大GBS-DSおよびGBS-DS)。一方、タウのいずれのバイオマーカーも長期の臨床相関は示さなかった。機械換気の必要性は、BD-tau高値と関連していた(8.6 vs 2.9 pg/mL, p=0.019)。同様にビッグタウ高値とも関連していた(19.7 vs 10.7 pg/mL, p=0.007)。死亡率はBD-tau高値と関連していた(10.9 vs 2.9 pg/mL, p=0.003)。
【結論】中枢神経系疾患よりも末梢神経障害でビッグタウが高値であることは、ビッグタウが末梢神経系特異的バイオマーカーとして機能する役割を支持する。MFSでは、血清BD-tauの増加、ビッグタウの低下、ならびにNfL/ビッグタウ比の上昇は、中枢神経系の関与を示唆する一方で末梢神経系が相対的に保たれていることを示している。
https://doi.org/10.64898/2026.08.27.26361202