量子力学に対するグラフ理論的枠組みを構築する。ここでは、観測量と対称性演算子を単一の完全な2色付きグラフへ組み込むことにより扱う。提案する対称性/観測量量子グラフ(Symmetry/Observables Quantum Graph, SOQG)は、ハミルトニアン、観測量、保存量、ユニタリ対称性変換を、同一のヒルベルト空間上で作用する演算子として等価に取り扱う。グラフの頂点は演算子を表し、辺の色はその交換関係によって決まる。すなわち可換な演算子はマルーン色の辺で結ばれ、非可換な演算子はティール色の辺で結ばれる。その結果得られる構造は、演算子の適合性(compatibility)を表す組合せ論的表現としての有限のラムゼーグラフを与える。形式論は、中心ポテンシャル中の粒子、一様磁場中の帯電粒子、同種の外部一様場中の粒子など、いくつかの代表的量子系に適用される。いずれの場合も、単色クリークは、観測量と対称性演算子の双方を含む最大の適合性セクタを特定し、保存量と動力学的対称性の相互作用を明らかにする。さらに、色付きグラフの自己同型は一般に、基となる量子系の物理的対称性群と一致せず、そのことから「2次のグラフ対称性」という概念が導かれる。SOQGは、全ての演算子に同時にユニタリ変換を施した場合に不変であることが証明され、特定のヒルベルト空間表現というよりも、演算子代数の固有の性質を表すことになる。グラフ理論的構造は、ラムゼー理論およびMantel–Turánの極限定理を用いて解析され、相互に適合する/相互に非適合な演算子部分集合が現れるための厳密な条件を与える。続いて枠組みは、パラメータ依存の対称性/観測量量子グラフ(Parameter-dependent Symmetry/Observables Quantum Graphs, PSOQGs)へ一般化される。このとき適合性の構造は、外部パラメータが基となる交換関係を変化させることで変わる。磁気並進演算子では、基本並進セルを通る磁束が、磁束制御による色の切り替えを引き起こし、可換/非可換の適合性セクタ間で遷移が生じる。さらに、グラフ自己同型群の変化を伴うことも示される。提案する枠組みは、演算子理論、対称性、グラフ理論、極値組合せ論(extremal combinatorics)を直接結び付け、量子系に対する新しい構造的視点を提供する。
https://doi.org/10.20944/preprints202608.2221.v1