【背景】くも膜下出血(SAH)は炎症反応とそれに続く免疫細胞の活性化を誘発し、脳血管攣縮、微小循環障害、ならびに神経学的転帰不良に寄与し得る。脳血管攣縮はSAH後の遅発性脳虚血の主要な原因と従来考えられてきたが、血管造影上の血管攣縮を標的とする治療は機能的転帰を一貫して改善していない。早期の炎症反応は微小循環障害、脳血管攣縮、そしてその後の神経学的障害に寄与し得る。本研究では、抗炎症性サイトカインであるインターロイキン10(IL-10)が実験的SAHモデルにおいてこれらの転帰を改善するかどうかを検討した。【方法】マウスに、IL-10をコードするアデノ随伴ウイルスベクター(AAV/IL-10)または緑色蛍光タンパク質を発現するAAV(AAV/GFP)(対照)を筋肉内投与した。インク灌流血管造影により、脳血管攣縮、微小循環障害、および脳灌流の指標として、それぞれ中大脳動脈(MCA)の蝶形骨部位の血管径、皮質において観察される動脈の総延長、ならびに皮質染色強度を評価した。血管周囲の炎症性細胞浸潤およびサイトカイン量は、免疫組織化学およびELISAにより評価した。さらに、SAH誘導直後に投与した際のAAV/IL-10ベクターの治療効果も評価した。【結果】IL-10の過剰発現はSAH後の神経学的転帰を有意に改善し、脳血管攣縮および微小循環障害の抑制、ならびに脳灌流の温存と関連していた。加えて、内頸動脈周囲における好中球およびマクロファージの浸潤を有意に減少させ、SAHにより上昇するIL-6およびマトリックスメタロプロテアーゼ-3のレベルを抑制した。SAH誘導直後にAAV/IL-10ベクターを投与したマウスでは、神経学的スコアおよび脳灌流が有意に改善した。【結論】AAVを介したIL-10の過剰発現は、炎症反応、脳血管攣縮、ならびに微小循環障害を抑制することにより、SAH後の神経学的転帰を改善する可能性が高い。これらの知見は、IL-10に基づく抗炎症療法がSAHに対する有望な治療戦略であることを示唆する。
https://doi.org/10.64898/2026.08.25.747167