ミトコンドリアは細胞の代謝における中枢であり、ミトコンドリア機能障害は多くの慢性疾患の特徴である。その結果、ミトコンドリアDNAコピー数(mtDNA-CN:1細胞または組織サンプル中のmtDNAゲノム数)の変化は、がんや肥満から乾癬、全死因死亡に至るまで、さまざまな疾患と関連している。mtDNA-CNは特に神経変性疾患のバイオマーカーとして有望であるが、神経変性に伴ってmtDNA-CNがどのように変化するのか、またその変化の有無は議論がある。ここでは、神経変性疾患の有無を含む集団におけるmtDNA-CNを対象にした156の比較を含む76研究を用いて、系統的レビューおよびメタ解析を行い、研究間のばらつきを説明しうる全体的な傾向と潜在的なモデレーターを同定した。全体として、mtDNA-CNは神経変性と統計学的に有意な差は示さなかったが、研究間の異質性は極めて大きかった(I2 = 99.5%)。診断名が最も大きな変動を説明した。例えばアルツハイマー病患者ではmtDNA-CNが21%低下していたが、パーキンソン病ではmtDNA-CNの変化はなかった。神経変性中のmtDNA-CN低下は、より高齢でもより極端であった。さらに驚くべきことに、mtDNA-CNで採取した組織は特定の疾患を除いて特に重要な影響因子ではなかった。より早い時期に公表された研究でも、神経変性に伴うmtDNA-CN低下がより極端であることが示された。すべてのモデレーターおよびそれらの相互作用を考慮した後でも、過剰な異質性は残存していた(I2 = 85.7%)。以上より、神経変性に伴うmtDNA-CN低下という一般的な認識は、初期研究のレガシー効果に由来しうる大幅な単純化であると結論づける。一方で、適切な交絡因子を考慮できるなら、mtDNAレベルは神経変性疾患のみならず他の疾患や一般的な健康指標に対するバイオマーカーとして大きな可能性を有する。
https://doi.org/10.64898/2026.08.25.747144